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オピオイドによるがん疼痛緩和

オピオイドによるがん疼痛緩和
By (author)  林憲一
3 stars out of 5(1 rating)
Format : eBook
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Book Description

がんは、日本で1981 年より現在まで引き続いて死因の第1 位である。2010 年の死亡者数は約
35 万人で、生涯のうちに約2 人に1人ががんにかかると推計され、依然としてがんは国民の生命
と健康にとって重大な問題である。
本書の前版が2006 年に刊行された直後に、がん対策のより一層の推進を図るため、がん対策
基本法が成立した。この法律に基づいて、がん対策を総合的かつ計画的に推進するための5 カ年
「がん対策推進基本計画」が2007 年に策定されて、がん診療連携拠点病院の整備や緩和ケア提供
体制の強化などが行われ、がんの年齢調整死亡率は減少傾向であるなどの成果を得られつつある。
しかしながら、人口の高齢化とともに、日本のがんの罹患者の数、死亡者の数は今後とも増加し
ていくことが見込まれ、さらなる取り組みが求められている。
その中で、緩和ケアに関する要求の重みは大きい。がん患者とその家族が可能な限り質の高い
生活を送れるよう、緩和ケアが、がんと診断された時から提供されるとともに、診断、治療、在
宅医療など様々な場面で切れ目なく実施することが求められている。しかし、日本では、欧米先
進諸国に比べ依然としてがん性疼痛の緩和などに用いられる医療用麻薬の消費量は少なく、がん
性疼痛の緩和が十分でないと考えられる。また、がん医療に携わる医師の緩和ケアの重要性に対
する認識もまだ十分とは言えず、国民に対しても未だ緩和ケアに対する正しい理解や周知が進ん
でいないと指摘されている。さらには、身体的苦痛のみならず精神・心理的苦痛への対応も求め
られている。このように、緩和ケアはまだ十分にがん医療に浸透していないと考えられている。
これに対して、2012 年6 月に策定された次の5 カ年のがん対策推進基本計画でも、「がんと診
断された時からの緩和ケアの推進」が盛り込まれている。この第二次基本計画では、まず、がん
医療に携わる医療従事者への研修や緩和ケアチームなどの機能強化などにより、がんと診断され
た時から患者とその家族が、精神・心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアを受
けられるよう、緩和ケアの提供体制をより充実させ、緩和ケアへのアクセスを改善し、こうした
苦痛を緩和することを目指している。さらには、がん患者が住み慣れた家庭や地域での療養や生
活を選択できるよう、在宅緩和ケアを含めた在宅医療・介護を提供していくための体制の充実を
図ることも目標としている。このような状況で、オピオイドによるがん疼痛緩和の重要性が一層
増しているといえる。
このような現状を踏まえ、さらに、2006 年の前版以降、新たなオピオイド製剤や鎮痛補助剤の
開発、さらには診療報酬の数次にわたる改定など、大きく進歩した事項が多くあることから、こ
の度、内容を全面的に見直して、改訂版を刊行することとした。
これまでの版同様、がん治療に関わる病院・診療所・保険薬局において、最前線での業務の参
考にして頂くとともに、薬学教育6 年制により高度化が進む薬学生、大学院生の教育研修などに
おいても活用して頂ければ幸いである。